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講師

青木 保氏 プロフィル

1938年生まれ。
文化人類学者・文化政策研究者・国立新美術館館長
東京大学大学院で文化人類学を専攻・大阪大学で博士号取得(人間科学博士)
大阪大学、東京大学、政策研究大学院大学などで教授を務め、2007年4月-2009年7月文化庁長官。
2009年8月から青山学院大学大学院特任教授。
この間、タイ・国立チュラロンコン大学研究員、米ハーバード大学客員研究員、仏国立パリ社会科学高等研究院客員教授、独コンスタンツ大学客員教授なども務めた。
日本民族学会(現文化人類学会)会長(1994-1996、現在名誉会員)。日本文化政策学会顧問。
1965年以来、タイ、スリランカなどのアジア各地、英国、ドイツ、フランスなど西欧各地、中国などで文化人類学・文化政策学研究のフィールドワークに従事。1972年から73年にかけてバンコクのタイ仏教寺院で僧修行を行う(「タイの僧院にて」中公文庫、にその体験を書いている)。
受賞:サントリー学芸賞(1985年) 吉野作造賞(1990年) 紫綬褒章(2000年) 著書:近著に「『文化力』の時代」(岩波書店、2011年12月刊) 「作家は移動する」(新著館、2010年)。その他、「多文化世界」「異文化理解」(以上、岩波新書) 「儀礼の象徴性」(岩波現代文庫) 「アジア・ジレンマ」(中央公論新社) 「『日本文化論』の変容」(中公文庫)など多数。

講演の概要

民音創立50周年を記念し、民音音楽博物館の特別企画として開催することになりました「『音楽の力』文化講演会」の第1回目が、平成25年11月21日(木)19時より日本青年館・国際ホールで開催されました。講師には、現在、国立新美術館館長の青木保氏をお迎えし「文化力の時代と日本」と題し、ご講演いただきました。

青木氏は、国力を示すのに経済力や軍事力、政治力など様々な力があるが、「文化力」とはなかなかいわない。しかし、「文化力」は実は大きな意味をもつのである。21世紀になって、日本をめぐる国際文化環境が変化し、アジア諸国が国力を示すのに「文化力」を強くしていくことの重要性に気付きはじめた。特にここ数年のアジア諸国での「文化力」を具体的な事例をあげて説明した。

世界の中でも、日本ほど外国の文化を広く取り入れている国はない。かといって自国の文化をなくしているわけではなく、外来の文化を同化し、自分のものにし、日本文化の魅力的なかたちにする知恵を発揮してきた。異質なものを取り入れながら自分たちの特長ある文化をつくってきた。これは21世紀の世界のモデルになるのではないかと思う。こうして生まれた日本の文化は、グローバル化の時代に、世界のどこでも受容され愛好される。例えば、村上春樹の作品は、あらゆる国で読まれている。これは、日本の普通の男女の物語が、どの国の人の感情にも訴えることを意味する。現代日本でできた文化が世界の人々の心を捉えることである、と述べ、「文化力」が問われる時代における日本の役割について語った。

20世紀までのアジアでは、一般の人間、市民・庶民の間の交流がなく、お互いの理解が欠如するままの不幸な時代であった。21世紀に入って、アジアにおいても、国際的な文化交流の時代となり、一般市民の間の交流ができるようになった。とくに日本は、たとえ政治や経済での国際的な困難な状況が生れても、文化の交流を大事にし、日本とアジア、日本と世界との関係を積極的に築いていくべきであると論じた。